2020年7月30日木曜日

Rubus calycinoides (ルブス カリシノイデス)

キイチゴ属野生種

別名:R. hayata-koidzumii、R. pentalobus、
  'Emerald Carpet'、クリーピングラズベリー、オレンジベリーなど

自生地:台湾の高地 (Hardiness Zone 7)

草姿:常緑、這い性、草丈5~30cm
トゲ:なし

花:春、小さな白い花、平開しない
果実:夏、オレンジ色、風味はあまりない



海外の園芸ネットショップを見ていてオレンジベリー (Orangeberry) なるものを見つけた。
写真を見るからにキイチゴ属で、何だろうと思い、調べてみるとコレだった。

この種は日本でも販売されている。

グランドカバープランツとして。

日本では食用とは紹介されていない。
風味はあまりないとのこと。甘酸っぱいだけなのだろう。
自家受粉するかは不明。

グランドカバーに使われるだけあって密なマットを作る。
広がりもよく、年30cmほど伸びるようだ。
フユイチゴと違って茎にも葉の裏にもトゲは無いので安心だ。
性質は頑強で、耐暑性も耐寒性も高い。低温は-12℃まで耐える。
寒冷地では冬に紅葉し、カラーリーフとして美しい姿をみせる。
花は小さいし平開しないようので観賞価値は無いだろう。

てっきりトゲがあるものだと思っていたらトゲなかったのね。
トゲが無いならキイチゴ好きとしては植えなければなるまい…

ちなみに分類学的には Rubus hayata-koidzumii が正式名称らしい。
園芸の世界では流通名が古かったり違ったりするのは、お約束だ。


2020年7月21日火曜日

Rafzaqu (ラフザク) / Himbo-Top® (ヒンボートップ)

ラズベリー

起源:Peter Hauenstein、Rafz、スイス ('Autumn Bliss' x 'Rafzeter'(Himbo-Queen))

パテント:スイスPVR 04.1668 (2004年登録)、EU PVR 13008 (2004年登録)、USPP19512 (2008年登録)、
種苗法第20725号 (2011年登録) など

草姿:直立性、背が高い、樹勢が強い
トゲ:少ない、短い

収穫期:二季成り (下は富山県の場合)
 フロリケーン:中生 6月上~7月中
 プリモケーン:早生 7月下~11月下 (霜が降りるまで?)

果実
 色:紅、光沢は強 (品種登録情報)
 大きさと形:やや大 (重さ2.8g (富山県))
 味と香り:糖度 11.0、pH 2.9、香気 中 (5段階) (秋田県)
 硬さ:強 (小核果の接着度) (富山県)

Hardiness Zones:4-8


2000年発表。

大きな果実で収量が多い品種。
世界各国で品種登録されている。
スイス、EU、イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、メキシコ、チリ、アルゼンチン。
そして日本。
海外のパテント品種のうち、日本で品種登録されて普通に販売されているラズベリーはコレだけである。
('NR7' はまだ申請中で現在販売が確認できない)
もっと色々導入してほしいものだ。クウェリとかクワンザとか。

日本に導入されて長いので栽培試験データも各地で報告されている。
軽く確認できるだけで富山県、秋田県、山形県で二季成りの推奨品種となっているようだ。
山形県の最上地域の資料が詳しそうなのだが、残念ながら会員以外は見れない。残念。

やはり日本でも収量が多く商品化率も高いようだ。
驚くべきことにフロリケーンとプリモケーンの収穫がほぼ連続している。
しかし果実の大きさは海外の販促情報 (6g~8g) の半分で 3g ぐらいである。
アメリカの試験データでも同じく 3g ぐらいだった。

日本の試験データでは食味が「良」とか香気が「中」とのこと。
アメリカの試験データでは mild flavor とか good flavor である。比較対象品種が新しいからだろう。

富山県の熟度判定用カラーチャートの資料では収穫後 5℃冷蔵 2日後の結果が報告されている。
主観だが、かなり早い段階で収穫しないと保管中に液漏れするようだ。

root rot への抵抗性が強い。

ネットの評判では酸味がちょっと強く、タネが大きめとのこと。
とはいってもブラックベリーのタネに比べれば大したことはないだろう。

現在、天香園と国華園で購入できる (2020年7月時点)。
収穫期間が長いのはちょっと魅力。日本での試験データは悪くない。しかも地元のデータ。
トゲも少ないみたいだし、ちょっと欲しくなってきたな。。。


2020年7月16日木曜日

Nantahala (ナンタハラ)

ラズベリー

起源:ノースカロライナ州立大学、ノースカロライナ州、USA (('Algonquin' x 'Royalty') x 'Rosanna')

パテント:USPP20689 (2010年登録)

草姿:立性
トゲ:あり

収穫期:二季成り (ノースカロライナ州の場合)
 フロリケーン:不明
 プリモケーン:極晩生 9月上~11月 (霜が降りるまで)

果実
 色:暗い赤色、光沢は中程度
 大きさと形:中~大 (重さ3.5g)、円錐卵形
 味と香り:風味は素晴らしい (excellent flavor)
 硬さ:中程度~硬い (Medium to Firm)

Hardiness Zones:6-10


1994年交配、2008年発表。

ノースカロライナ州立大学の50年以上にわたる育種プログラムから最初に発表された赤ラズベリーの品種。50年て・・・
ネイティブアメリカンのチェロキー語で Nantahala は「真昼の太陽の国」を意味するそうだ。
紫ラズベリーの 'Royalty' が祖父である。
そのせいか果実の色が暗い赤色である。

'Heritage' に比べ小核果の数が少ない割に果実全体は大きく、中のタネが小さい。
そのため食味はジューシーでタネのザラザラ感が少ない。

大関ナーセリーの説明文にあるとおり食味の評価は悪くないのだが、外観と保存性は問題がある。
特にプリモケーンの果実は、保存期間中にカビが生えやすいというデータがある。

極晩生なので霜よけしないと収量が上がらないようだ。
だからといって暖かい地方に向くかというとそうでもなく、暑さに弱いとの情報もある。

灰色カビ病とうどんこ病の影響を比較的受けやすい。


以前、大関ナーセリーから購入して育ててみたが、とても美味しかった記憶がある。
なんだか他のラズベリーとは一味違う感じがした。コクのある甘味というか。
残念ながら昨年、水切れと酷暑で枯死させてしまったが、今度は地植えでリベンジしたい。


2020年7月14日火曜日

Vintage (ヴィンテージ)

ラズベリー

起源:USDA-ARS、オレゴン州、USA ('Isabel' のオープン実生)

パテント:USPP24198 (2014年登録)

草姿:立性、高さ1.75m、幅0.96m
トゲ:中密度、長さ0.77mm ('Heritage' の約半分)

収穫期:二季成り (下はオレゴン州の場合)
 フロリケーン:不明
 プリモケーン:晩生 ('Heritage' より22日早い)

果実
 色:明るい赤色
 大きさと形:大~中 (重さ3.2g(オレゴン州)、2.5g(ユタ州))
 味と香り:風味抜群 (outstanding flavor)、甘い
 硬さ:硬い (firm)、'Heritage' と同程度

Hardiness Zones:?


2004年交配、2011年発表。

大関ナーセリーの取り扱っているラズベリー品種のなかでは最新のもの。
'Heritage' に似ているが、明るい赤色で見栄えが良く、酸度が約半分。
Brixは 12.20 で高く、風味は9段階中 7.7 とかなり良い。
また 'Heritage' よりも果実が果床から外れやすく収穫が簡単。
ここまではオレゴン州立大学OSU-NWREC (ゾーン8b) での試験結果である。

しかしユタ州の2012年の品種紹介では Brix 9.0%、重さ2.5g とされている。
風味も「まともな味 (Decent flavor)」と微妙な表現である。
2014年のアメリカ北西部の品種紹介では風味抜群 (utstanding flavor) とのことなのだが。
ラズベリーは育てる気候により大きく品質が変わる。
ユタ州の気候にはあまりあっていなかったのだろう。

RBDV や root rot には残念ながら感受性がある。


悪くない品種に思えるのだが、海外のショップで売っているのはあまり見かけない。というか検索しづらい
残念ながらあまり普及していないのだろう。多分。
といっても日本で手に入れられるラズベリーでは最新の品種である。

昨年は手に入れられなかったので今年はカタログのハガキで発注した。
楽しみである。


2020年7月6日月曜日

Rubus chingii var. suavissimus (テンチャ)

キイチゴ属野生種

別名:Rubus suavissimus、甜茶、甜葉懸鈎子

自生地:中国南部広西省チワン族自治区 標高500~1000m

草姿:直立性、草丈1.5~3m
トゲ:太くて短い (5~6mm)

花:3~4月、3~5cmの白い花を下向きにつける
果実:5~6月、赤色、甘い (very sweet)



甘いお茶として有名なテンチャ。これもキイチゴ属である。
ブラックベリーの仲間らしい (果床ごと果実がとれるタイプ)。

葉は単葉でカエデのような形。5~7深裂する。
葉にはショ糖の75倍の甘味をもつルブソシド等が含まれており、噛むと生の葉でも甘味を感じる。
この葉を乾燥したものが甜茶である。

富山県の薬用植物指導センターに植えられていたのを一昨年みた。
太い枝は直径 3cm 以上で高さは 3m を優に超えていた。
元気なブラックベリーのようである。トゲはそれほど凶悪ではない。
そして株元からだけではなく、地下茎からもサッカーが出てくるようだ。
株元から 5m ぐらい離れたところにふっといサッカーが出てきていた。
地植えすると大変そうである。

果実は very sweet とのことだが実際はどうなのだろうか。
もしもルブソシド等の甘味成分が果実にも含まれていれば非常に甘く感じることだろう。
誰か知りませんか?

日本でもネットショップで苗が販売されている。
しかし繰り返すが、地植えは覚悟が必要だ。


下の写真は今年の6月。2年枝が剪定されて当年枝だけになっている。
右後ろに地下茎から生えたケーンが見える。


ちなみにラズベリーの葉も乾燥したものがラズベリーリーフティーとして利用されている。
味はクセがないので他のハーブとのブレンドをお勧めする。
また樺太のアイヌ民族はエゾイチゴ (ラズベリーの亜種) の茎葉 (キナカオホニ) を煎じて茶として飲んでいた。
ラズベリーは葉にも利用価値があるのだ。